髙島 宏平 氏
代表取締役社長
オイシックス・ラ・大地株式会社
生鮮食品ネット通販の先駆者、髙島宏平氏。
オイシックスの創業から、現在はオイシックス・ラ・大地の代表取締役社長として、国内外の食事情に更なる変革をもたらし続ける挑戦者。そんな髙島氏がセレクトしたGINZA TAILORのハンドメイドスーツは、格子柄のスリーピースだった。
ハンドメイドのフィット感
・・・あったかい。ハンドメイドならではの身体に沿うようなフィット感でしょうか。あまり体感した事のない温かさを感じます。
ベンチャー企業では珍しいと思いますが、僕は毎日スーツを着ています。自分にとってスーツは戦闘服。着た瞬間から戦闘モードに変わります。作業着として一日中着ることも多く、着倒すまで着る。
ただ銀座テーラーのスーツは少し着用シーンを考えちゃいますね。ご提案いただいたダブルのベストや格子柄は初めての体験でした。相手の記憶に残すためにも、講演や会合で着用していこうと思います。以前、農家の方に覚えてもらうために、スーツ姿で畑を訪問しました。流石に、銀座テーラーのスーツは畑には着ていきませんが(笑)
企業への原動力
どの時代もなくてはならない『衣食住』において、インターネットを活用することで、社会に対して良いインパクトを与えたいと考えていました。特に「食」に関しては、サプライチェーンの複雑さから、自分たちが口にするものは、いったい誰が作っているのか分からず、安全に対する漠然とした不安がつきまとう。インターネットであれば、サプライチェーンの無駄を省き、コンテンツを無制限に掲載できるので一人ひとりのニーズに合わせられる、生産者の想いやストーリーも載せられて、誰がどんな想いで作ったかわかるようにできるなど、解決策がたくさんある事に気づきました。
また、2000年当時はアメリカでも生鮮食品を扱ったイーコマース事業の成功例はなく、世界初の事業を目指せると思いました。今でも同じですが、どんな事業を始める時もトレンドではなく、自分たちが関わる必要があると思うからこそ、チャレンジしたくなる。当時は周囲の人に反対をされましたが、天邪鬼で負けず嫌いな性格なので反対されるほど、やりとげたいという思いが強くなり原動力となりました。
感動のしかけ
お客様からいただくフィードバックから、「美味しかった」という感想は、そのお客様以外の誰かがいる事に気づきました。お子様だったり、旦那様だったり、同じ食材でも、いつ、誰と、どんな場面で食べるかで、美味しさが全く変わります。そこで、初めてご注文いただいた方には、生産者の思いやその食品にまつわるストーリー、作り手オススメの食べ方をメールでお送りし、食卓に会話と感動をしかける工夫を常に考えています。例えば、新鮮な野菜を生のままでも味わっていただけるように美味しい塩をおまけで付ける。いつもはおひたしで食べていたほうれん草が、ある日の食卓には塩と一緒に生のまま出てくる。するといつもの食卓にちょっとした違和感が生まれて、会話とコミュニケーションに繋がる。食品を売るだけではなく、お客様と家族が喜んだ顔を想像しながら、次々感動を仕掛けていきたい。
新しい文化を創造する
2017年から2018年にかけて、オイシックス、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの経営統合をした時に、取り決めた事がありました。それは、行動規範といった指針になるものは、これからの基軸を新たに創造していくことでした。もともと企業理念が近しい3社だったのでお互いに共感をもっている部分がありました。また、3社となると、お互いどこ出身か意識しなくなったので新しい文化を作りやすかったです。物理的にも工夫をし、オフィスはワンフロアにこだわり、障害物など高いものは置かないことで見通しを良くし、一体感をだすようにしました。社員のコミュニケーションを円滑にするためにも、飲み代、ランチ代を会社で負担しましたよ。皆さん、それはよく飲みました!
座右の銘:「降りかかる問題は選べないが、問題を解く態度は選べる」
会社を設立してまだ2年目の頃、お客様への発送停止の最大の危機に陥りました。委託先の配送センターが突然廃業をすることになったことが発端で、移転先はなんとかみつかったものの、一部業務を社員でこなさねばならず、昼は通常業務や出資企業を探しながら、夜中まで商品の袋詰めや箱詰め作業に追われました。1か月ほど泊まり込みの状態が続き、思い出すと吐き気がするような出来事でしたが、このピンチの克服をメンバー達と共有できたことは、その後起きたトラブルを乗り越える力にもなり、結果、会社を強くしたと思っています。
この最大のピンチの過程で、僕たちは仕事に対するあるスタイルを確立しました。トラブルが発生するたびに、あるテーマソングを決めて、キツイ状況の時にその曲を流し、自分たちを奮い立たせる。対策ミーティングの前にお菓子とジュースを机いっぱいに並べて、何か楽しい事が起こりそうなワクワク感を演出する。このように、数々のピンチを乗り越えていく上で、問題が降りかかった時にただ落ち込んだりするのではなく、楽しく問題を解く工夫をすることで、危機をつらいだけのものしないことができます。また、楽しみながら問題に向き合うほうが、より良い問題解決に繋げてくれます。
■プロフィール■
1973年神奈川県生まれ。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了後、マッキンゼー日本支社勤務を経て、2000年6月に「一般のご家庭での豊かな食生活の実現」を企業理念とするオイシックス株式会社を設立、同社代表取締役社長に就任。2013年3月に東証マザーズに上場。2017年10月には「大地を守る会」と、2018年10月にはらでぃっしゅぼーや(株)との経営統合を実現し、食材宅配3ブランドを擁する新会社社長に就任。