新境地への挑戦

ソフトウェアの不具合を検出する「デバッグ」を行うプロフェッショナル集団として2001年に創業したデジタルハーツ。この新しい業界に入る決意をした大きな理由は、デジタルハーツの「人」のユニークさです。テスターと呼んでいるテスト人材のなかには、「ゲームが好きだから」という理由で入ってきた人も多く、「ひきこもり」状態にあったような人もいる。デジタルハーツでは、こういった新人に、先輩のお兄さん、お姉さんから「挨拶ってなんでしないといけないの」という基本から、デバッグ手法までひとつひとつ丁寧に教える。ひたむきに作業し、最初にバグを見つけられた時には、みんなで拍手する。それって、ひきこもっていた子が初めて社会に認められた瞬間だったりするわけです。そこから週2日だった出社が3日、4日になり、だんだんスキルが上がると正社員になっていく。

デジタルハーツの創業者である宮澤栄一さんのところに、引きこもりのお子さんを抱え思い悩んでいたご両親から「皆さんのおかげで家族が甦りました」と直接感謝の声が届いたと聞いて、本当に感動して。宮澤さんからも「元さん(玉塚さん)、彼らの人生を変えてください」と熱烈なオファーをいただき、これはもう受けるしかないなと。そして2017年6月にデジタルハーツの社長として参画することにしました。

ひきこもりからヒーローへ。第二創業のミッション

デジタルハーツに登録している約8,000人のテスターは、オタクやゲーマーという人も多く、「テスターになれば発売前の人気タイトルに触れられる!」という理由で入ってくる子が結構います。実はこうした人達のなかには、ものすごい集中力があって、ゲームのおかしいところをずーっと探して止まらない人もいるわけですね。このような人たちは、ゲームのデバッグだけではなく、業務システムのようなゲーム以外のソフトウェアのテストやセキュリティといった、より高度な知識・技術が求められる業務への素地を持っていたりします。そんなテスター個々人のスキルを可視化するため、タレントマネジメントシステムを導入したり、人事制度を変えたり、様々な取り組みを行っています。

デジタルハーツに参画してから、コミュニケーションが苦手な人もデジタルの世界では大活躍できる、といった可能性を目の当たりにしてきました。オタクやゲーマーと呼ばれる人達の中から「伝説」となるようなスペシャリストを輩出し、ロールモデルやヒーローとなっていく。皆がそれを目指すようになって、多くの人の人生が変わっていく、そんなストーリーを作りたい。

入口はゲームのデバッグで入社してもらい、会社は、研修やOJTといった教育プログラムや、資格取得の支援制度を整える。そして、ゲームだけではなく非ゲーム領域のテストも出来るようになり、さらにはセキュリティの仕事なども任せられるようになる。このように、いろんな人が劇的に成長できる、人材輩出企業になることが、今僕が目指していることの1つです。

組織を作り替える覚悟と、更なる飛躍

僕は、柳井正さん(ファーストリテイリング)から経営や商売の多くを学んだのですが、柳井さんの凄いところは、極めてシンプルに、健全な会社をどうやったら作れるかをずっと客観的に研究しつづけるところです。柳井さんがよく話していた「3倍ルール」は、30億円の売上を100億円、100億円を300億円、1,000億円を3,000億円にするとき、それまでのやり方を否定するくらいの、すべてをひっくり返すような経営改革をする!そうしないと組織がプラトー(停滞)を迎えてしまう。柳井さんはそうした経営改革を実際に実行してきたのです。

今のデジタルハーツは200億円くらいの売上で、300億円の壁にぶつかりつつある。さらに1,000億円の会社になるために、本気で取り組まないといけない。デジタルハーツが今までゲーム業界で積み上げてきた信頼、ゲーム愛にあふれた人材や風土などの強みといった大事なエッセンスは絶対に守りつつ、飛躍的に広がるデジタル製品のテストやセキュリティの分野において、マーケットを確保したい。そのため、日々ものすごい熱量とスピード感で「第二創業」として様々な経営改革推進しています。

初めての“三つ揃え”スーツ

僕は『スリーピース』を作ったのは初めてで、ピシッと気が引き締まる思いです。さっきズボンをはいた時にもびっくりしたのだけど、銀座テーラーのスーツは内側の細かい装飾のアクセントがすごく格好よい。完成前のフィッティング(仮縫い)も快適で、感動がありました。これがちゃんとフィットし続けるように、体のシェイプを維持しないといけないな、と(笑)。

座右の銘:「練習は不可能を可能にす」

経済学者・教育者・文筆家であり、慶應義塾の塾長を長年に渡って務めた、小泉信三博士の言葉です。

現役のラガーマンの頃、当時の慶應大学は花園組などの強いメンバーを呼ぶことが出来なかったので、内部進学者をひたすら鍛え続けた。結果として4年時には明治大学や早稲田大学といったライバルに勝ち、関東大学対抗戦全勝優勝、大学選手権準優勝を勝ち取り、『練習は不可能を可能にす』を体現できた。そのメンタリティや“絶対できる”という自信は、現在のベースにあるのかもしれない。

玉塚元一(たまつか げんいち):1962年生まれ。デジタルハーツホールディングス代表取締役社長 CEO。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、ラグビー部時代のポジションはフランカー。旭硝子に入社後、MBAと国際経営学修士号を取得。その後ファーストリテイリング、リヴァンプ、ローソンなどの代表を歴任。2017年6月より現職。